河内章
河内章
ゲーテアーヌム別館
ゲーテアーヌム別館

シュタイナーの色彩論

ルドルフ・シュタイナーは絵画や彫刻に関して己の理論を展開したがそれは芸術を通常の現実に対して, もう一つの生命世界として打ち立てそこにこそ生命の意味があると主張している。 

すでに定着していたニュートンの古典物理学的色彩論, 「プリズムによる分光と, たとえばある物体が赤く見えるのは, 他のすべての色彩は物体の表面で吸収され, 赤の色だけが反射されることによる」というのがニュートンの物理学的な色彩論なのだが, これに異議を唱えている。ニュートンの物理学的色彩論は,「物質」としての色彩をとらえているが, 色彩は人間の霊的なイメージとして考えなければならない。色彩は物の側面を持っているが人間界と霊界の境界にあってそれぞれの意味を表現している。たとえば赤は生命のダイナミックな動きと怒り。緑は死者の世界。黄色は果てしなく放射し万物を照らそうとする霊性の色。黒は霊界の色。青色は内部に沈潜する集中する色。紫は青と赤のぞれぞれの混色であるから生命の内に秘めた内面の色。これらの色彩感によって構成された画面は色彩遠近法であり四次元の絵画である。20世紀になって盛んになった抽象絵画は, 具象画では表現できない新しい感情表現に適している。このように, 色彩の持つ特性がわかればその色彩の組み合わせによって, 新しい色彩遠近法による第四次元絵画が生まれることが可能となる。自然主義の写実的な色彩は色彩本来の霊的エネルギーを失っている。現代の世界で全く過去の物となってしまった, ある種の崇高性も表現することができる。それが超感性的世界=感性的世界の表現となる。ただし画家自身の内部においてその感情と体験が絵画の基礎となる。抽象の特質は, 感情をシンプルに物質世界を超えて表現することにある。その意味では音楽に似ている。あたかも指揮者のように, 色彩達を自在にあやつるのだ。新しい超感性世界=感性世界の表現が私の作品である。